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富岡東中学校


富岡東中学校

昭和54年4月3日、西柴中学校から独立開校した金沢区6番目・並木初の中学校。

古くからの陸地・富岡と、元は海だった並木が統合された珍しい学区。学校名が「富岡」なのは、開校当時の生徒がほぼ富岡住民だったことに加え、「並木」の名称がまだ認知されておらず、横浜のどこにあるのか分かりにくいという意見があったからだそう。

校舎建設中の様子(1990年記念誌より)

校舎完成が遅れたため、開校式は西柴中の体育館で行われ、勉学も西柴中校庭のプレハブ教室。生徒は富岡・並木からバスで通学していました。

雨の中、二年生全員と教職員が引越し作業を行い、同年10月1日に現住所へ移転。これにちなみ、創立記念日も10月1日に制定されています。

初年度の生徒は一・二年生のみ。そのため卒業式は開校二年目から行われています。

群建築研究所設計の校舎は、第25回神奈川県建築コンクール(昭和55年度)で一般建築物部門優秀賞を受賞。大きく窓をとった明るく広い廊下が南北に走り、その左右に教室棟が連なります。

初期の廊下には低い柱が北斗七星のように並べられたり、ポスターが掲示できる低い壁が設けられていました。現在もその跡は床に残っています。(写真は1990年記念誌より)

特殊な校舎の配置により、中庭は3か所に。メンテナンス上の理由で現在は無くなりましたが、当初は池もあったのだそう。

休み時間になると生徒の歓談風景があちこちに見られます。

上写真の三角部分は、元は中庭・テニスコートだった場所。開発途上の街で生徒数の推移が不安定なことから、当初から増築予定スペースとされていました。

実際に、初年度369名だった生徒数は4年で1000名を超え、校舎の増改築は7年で4回。校内は日々工事の音が絶えなかったといいます。

黄色丸印は、創立時正門だった場所。現在は使用されていません。

内外に関わらず、配管等の露出が多く見られる校舎。階段の手すりなどに鉄素材がそのまま使われているのはおそらく意図的なデザインだろうとのことですが、急な増改築によるやむを得ない事情なのか、現在の教職員では解らないのだそう。

校章は、公募作品を基に、当時の美術教員・竹内幸昭氏がデザイン。波静かな浜に美しく舞うかもめ配し、未来へ大きく飛躍することを願って作られました。

昭和57年度まで校歌が無く、卒業式では横浜市歌を歌っていましたが、58年度に間に合うよう制作がスタート。作詞は初代副校長・新井昭一氏で、校章デザインの経緯を受け継ぎ歌詞に「かもめ」を入れたといいます。作曲は保護者の推薦により、横浜交響楽団指揮者・立野高校教員(当時)の甲賀一宏氏が手掛けました。

教員用入口(左)には、卒業制作と思われるモザイク画や、歴代生徒のトロフィーが。

生徒昇降口(右)。校舎内に入ると、まずその日の各新聞一面、生徒会・部活動のポスターなどが目に入ります。

生徒会本部前には意見箱が置かれ、生徒からの要望を受け積極的に活動をしています。

総会は全生徒が体育館で直接参加。「自分たちの力でトミヒを創り上げる」という意識が、個人と学校の成長につながっている様子。

図書館では書籍だけでなく並木住民によるウェブサイト「四季の便り」を閲覧できたり、生徒が入りやすい雰囲気に装飾されていたりと、司書の先生による心遣いを感じます。

今はどの中学校でも見られる合唱コンクールですが、富岡東中では昭和59年から開催されています。現在は、鎌倉芸術館ホールなどを借りてのコンクールと、学内展示会を併せて「文化祭」の位置づけに。合唱は声楽家の卒業生を招き、各クラス3回ずつ指導を行うなど、学校全体で力を入れています。

その他、体育祭や修学旅行などと並んで中心行事とされているのが、2年生の「会津自然教室」。尾瀬沼ハイクや郷土料理作りを体験します。東日本大震災の年も予定通り行ったそう。

昭和60年卒業制作の銅版作品。

開校当初は毎年50人もの転入生があり、学級再編成が繰り返され生徒内には混乱がありました。親世代は新興住宅地ゆえ横のつながりが薄かったこともあり、教職員はそれらをまとめる地道な努力を続けてきました。いわゆる「荒れ」問題も、教職員からPTAへ、やがて地域へと支援が広がり、沈静化させていったといいます。

富岡東中学区では、平成24年度からタウンミーティングを実施しています。大人達の「地域で子供を見守ろう」という想いと、生徒の「楽しみながら地域に関わりたい」という想いをつなげようと、従来大人だけで行っていた「地域懇談会」の対象を生徒まで広げたもの。

毎年、小中学校の生徒・教職員・保護者・地域住民が一堂に会し、自転車マナーやいじめ防止、地域の良さの再発見などのテーマで話し合いが持たれています。

学校敷地内には、震災時に飲料水を確保する循環式貯水槽も。

様々な形で、地域との関わりを感じる中学校です。

 

参考文献

富岡東中学校10周年記念誌

鴎―はばたけ未来へ 1999 富岡東中学校記念誌

富岡東中学校2005 YearBook

並木第一小学校10周年記念誌

横浜の学校建築1982 (横浜市教育委員会施設部編 S57.10)

協力

村井法泰先生(富岡東中学校 第十二代校長)

神奈川県土整備局建築住宅部 建築安全課

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