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並木換気所


並木換気所

首都高速湾岸線・並木トンネルの、換気と防災を目的に造られた施設。

1999年(平成11年)7月15日、湾岸線「杉田~並木」の開通と、横浜横須賀道路金沢支線接続に伴って供用が開始されました。

並木換気所

ガラス張りのファサード・石造りの外壁によって、周辺建物と違和感なく同化するようデザインされています。交差点に面していることもあり、周囲の植栽で歩行者の視点にも配慮。

メインとなる換気塔は約40m(ふなだまり横のさざなみ団地とほぼ同じ高さ)ですが、縦にスリットが入れられ、見た目のボリュームが抑えられています。歩道から奥まった所に立っていることもあり、圧迫感がほとんどありません。

 

施設内部の大まかな様子。

(換気所内の模型より。複数写真を合成しています)

並木換気所

オレンジの矢印はトンネル内からの空気の流れを示します。この換気所の一番の役割は、トンネル内で出される排出ガスをトンネル出口から極力出さないよう、トンネル出口付近の排気口から集め、換気ファン(写真「1」)を使って屋外に排出すること。排出ガスを高度まで吹き上げ、拡散します。

並木二丁目第二住宅

換気ファンは直径3m、高さは建物2階分相当。

東行き・西行きの各トンネル用に2基ずつ設置され、上向きの強風(秒速30~40m)に変換します。

本来換気ファンは、トンネル内の排出ガス濃度が規定値を超えた場合に空気を入れ替えるための設備ですが、近年は自動車NOx・PM法による車種規制等により、値に達することははほとんどなくなりました。

稼働時の音が外に漏れないよう、壁には防音素材が施されています。声も全く反響しません。

また、天井のレールを使ってファンを移動させ、この場でメンテナンスを行うこともできます。

並木換気所

換気ファンの電源スイッチに当たる部分。通路の壁面にパネルが並びます。

並木換気所
並木換気所

ファンの隣の部屋には自家発電用のガスタービンが設置され(写真左上)、停電時の送電を行います。地下に備蓄した燃料を使用し、換気ファンだけでなく並木トンネル内の照明や料金所などの電力も担うそう。

発電機の音に配慮してこの部屋にも防音壁が。非常用電話も設置されています。

換気所内で出火の際には締め切ってCO2消火を行うため、作業員の避難を促すための赤い警報スピーカーが各部屋に見られます(写真右下)。

なお、2011年の東日本大震災でも並木は停電しなかったため、有事でガスタービンが稼働したことはまだ無いそうです。もちろんメンテナンス・試運転は定期的に行っています。

並木換気所

電力会社からの電力を引き受ける、受電室。

ここから換気ファンなどの様々な設備へ電気を分配します。

受電システムは2セット設置され(写真左。左右同じ役割だそうです)、片方を稼働させながら片方をメンテナンスする、など、様々な状況に対応できるようになっています。

並木換気所

トンネル内の水を汲み上げる、排水ポンプ室。

雨水だけでなく、火災時のスプリンクラーや消火泡の始末にも対応しています。並木トンネルは曲線で見通しが悪いため、非常用施設設置基準に従って様々な消火設備があるとのこと。

供用開始から約20年、通信環境の進化で縮小される機器も多くあるそう。

そのほか並木換気所内には、トンネル内カメラ・道路信号・文字情報板・ETCなど、高速道路運営に関する様々な通信設備が設けられています。また、地震で道路に段差が生じた場合に使用する段差修正材も常備しています。

 
並木換気所

冒頭の施設内写真「3」から撮影した換気塔。ここは隣のビアレ駐車場とほぼ同じ高さです。

黒い屋根の内部が、写真「2」の排気風道。換気ファンの真上に当たる部屋です。

ファンの風を一旦90度曲げて位置をずらしてから、ガスを上空へ送ります。これは雨水などがファンに直接落下しないようにする仕組み。

並木換気所

写真左/下からのファンの風を横向きに変える「ベーン」という設備。

写真右/排気風道の天井(=換気塔を真下から見たところ)。アナゴの寝床のような細いマスによって消音され、排出ガスは上空へ。

並木換気所

銀扉の内部が排気風道。

人1人分の細幅の階段は、換気塔の上まで続きます。

並木換気所

塔のスリット部分はパンチングパネルになっていました(写真右)。デザイン重視だった時代特有の外装。近年はシンプルな壁のみという換気所が多いそうです。

並木換気所

塔の最上部分。「田」の字状に4つの排気口が並びます。

並木換気所

3丁目を一望できる高さです。

並木換気所

長浜トンネル方面の景色と、換気所入口を見下ろした様子。

並木換気所

排気口から下を覗く(写真左)。

写真右の煙突は、ガスタービンのもの。

排出ガスは無色なので、換気塔から煙という景色は通常見られませんが、ガスタービン稼働時(メンテナンス時)のみ、若干煙が上がることがあるそうです。

 
並木換気所

換気所ファサードの内部。

並木換気所

換気所の外周にずらりと並んだレリーフは、平成3年「首都高速並木トンネル・親と子のふれあい体験ツアー」の記念につくられたもの。神奈川県魅力ある建設事業推進協議会(CCI)主催で、掘削中のトンネルを見学したり、作業車の運転を体験できるイベントです。

並木換気所

当記事作成にあたり、首都高速道路株式会社の担当者様より、丁寧な取材対応をしていただきました。

住民にとって並木換気所はかなり認知度が低い施設ですが、首都高側は、むしろ目立たないような立ち位置で安全に配慮し、周辺の安心や理解を得られるよう運営をしていきたいとお話下さいました。

並木トンネルの通行車両は1日平均約15.000台(平成28年度)。ここまで並木の住民側と目立ったトラブル無く続いてきた背後には、換気所での二重三重の安全対策があるということを、この記事を通してお伝えできればと思います。

並木換気所
 

取材協力

首都高速道路株式会社経営企画部 広報課 伊藤稔様

神奈川管理局 施設管制所 菅沼喜一様

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